「家が大変な状況なのに宝生くんが毎日学校に来るって分かって嬉しい私は最低だよね、ごめんね」
「夜は寝たいからっていう、俺の自分勝手な理由で無理やり平日働かせてもらってただけだし。休日も何もしたくないしな」
宝生くんは「それに」と言葉を付け加えて話を続けた。
「あっこのこと心配だったから、俺がいることで少しでも気ぃ紛れるんならよかったわ」
嬉しいと思う言葉を何食わぬ顔で並べる宝生くんはズルい。
「でも、宝生くんが毎日学校に来るようになったら、女子からモテちゃうよ」
「ああ、その必要はないから大丈夫。俺、女子には特に睨み利かせてるから」
「でも、私には睨んでないよね? どうして?」
「……さあな。ほら、余計なこと考えてないで一緒に選べよ」
宝生くんのこと、家が大変なこと、少しだけ知ることができた。
けれど、私が知りたい根本はそれじゃない。
私はきっと宝生くんを通して抱いているこの気持ちが何なのかを知りたいんだ。



