「え……それは、ちょっと……」
宝生くんと旧校舎でお昼ご飯を食べた日の夜、大変なことをしてしまったと恥ずかしさで頭がいっぱいになった。それからというものの、教室内で宝生くんを目で追ってしまう。
最近の私は変だ。宝生くんを見ると泣きたくなるほど嬉しくて、情緒が不安定になってしまっている。
こんなこと初めてでどうしたら良いのか分からない。
宝生くんのことをもっと知りたい私は、それとなく宝生くんに質問をしてみる。
「宝生くんって週に二回お休みしてるけどなんで?」
「俺ん家母子家庭で母親が朝も夜もがむしゃらに働いててさ。だから俺も週二で知り合いの喫茶店で働かせてもらってたんだけど、昨日辞めてきた」
家が大変な状況なのに『辞めてきた』と聞いて、ホッとした気持ちになる。
「辞めてきたの?」
「いい加減マジメに来ないと出席日数ヤバくて留年するって担任から言われたから、夕方からバイトさせてもらえるとこで来月から働くことにした」
宝生くんは部活には入っていない。その理由がなんとなく分かった。



