そんな中、「あっこ」と私の名を呼ぶ、いまでは聞き慣れた声が背後から聞こえてきた。
後ろを振り向くと宝生くんで、手には私が忘れたメモ紙を持っていた。宝生くんがいてくれて、声を掛けてくれたことにホッとする。
「宝生くん……」
「暇だったから後ついてきた。おまえがいない教室にいても楽しくないし、ゆっくり選ぼうぜ」
「声掛けてくれて良かったのに。……あ、そっか、一緒にいるところ見られたくないよね、ごめん……」
『おまえがいない教室にいても楽しくない』と言ってくれて凄く嬉しい反面、私と一緒にいるところを見られたくなかったんだということを思い出し、複雑な気持ちになった。
宝生くんは看板で使う材料をカゴに入れていく。
「逆。俺、浮いてるし。クラスのヤツから嫌われてる自覚あもあるから。だから、あっこが困るだろ」
「困らない」
「じゃあ旧校舎の屋上、また来てよ。あっこが通りやすいように割れてるガラスの破片片付けとくし、俺、昼休みあそこにいるし」
来てよと言われ、空いていた心の穴が満たされていく。
「いいの?」
「また弁当食いたいし」
「ちゃんともう一つ箸持って行くし、なんならお弁当の箱ももう一つ持ってくね」
「いや、それはいい。また、一緒の箸で一緒の弁当食おうぜ」



