「残り、俺が食う」
「え、ど、どうぞ」
ひたすら宝生くんが食べる姿を少し高い位置から拝見する。髪の毛は真っ黒で横を少し刈り上げている。
綺麗な二重で顔の彫りが深くて、鼻筋も通っていて男らしくてイケメンで、男の人なのに唇に厚みがあって、触れたら柔らかそう。
ジッと目を逸らさず観察していると、宝生くんはお弁当をかきこむように平らげた。
「もう少し落ち着いて食べてよかったのに」
「そんなジッと見られてて食えるか。時間もギリギリだし、戻るぞ」
先に立ち上がった宝生くんに腕を持ち上げられた。
そのまま二人で校舎まで戻ると、宝生くんは私に「もう少し離れて歩いて」と、下がるように言った。
仕方なく一定の距離を保って歩く。
近づけたと思っていた距離。
また勘違いをしてしまった。



