黒瀬さんから迫られてから数日後、授業が早く終わってつぐみと一緒に部活に行く前準備を始める。



そんな時、教室の前に部活を引退した先輩が顔を出してきた。



「あの・・・加藤さん」



「なんですか?」



「ちょっといい?話があるんだけど」



荷物を持ちながら先輩の所へと行くと、話があるとの事だった。



なんの事だろう・・・部活のことかな?



「ここじゃなんだから、場所変えてもいい?」



「はい、いいですよ。つぐみ、ちょっと行ってくる」



つぐみに声をかけてその場から離れ、先輩の行く所へとついて行く。



連れてこられたのは、人気の少ない渡り廊下だった。



「あのさ・・・俺・・・加藤さんの事がすきなんだ。俺と、付き合って欲しい」



「え?」



少しモジモジとしながらも、私に告白してくる先輩。



その先輩からの言葉に、一瞬黒瀬さんの姿が頭をよぎっただった。



「・・・ありがとうございます」



「え、じゃあ!」



「だけど・・・すみません。私・・・好きな人がいるんです。だから、あなたとは付き合えません」



告白の返事は、された時点で決まっていた。



だけど、その気持ちは嬉しいからありがとうと伝える。



「っ・・・そ、そっか・・・ありがとう。返事くれて」



「いえ、では失礼しますね」



それ以上話すこともないだろう。



そう思った私は踵を返して部活に向かおうとする。



「待って!」



「!!な、なんですか?」



その時、後ろから手首を掴まれ後ろを振り向かされた。



いきなり掴まれたことに驚き、少しだけ動揺する。



「好きな人って・・・誰?それだけ教えてくれない?」



「えっと・・・」



好きな人を思い浮かべてその人の特徴を伝えようとした時、灰田くんではなく黒瀬さんのことが頭に浮かんできた。



その事に驚きを隠せないけど、何となく察してしまう。



あぁ・・・私・・・いつの間にか灰田くんじゃなくて黒瀬さんのこと、好きになってたんだ・・・。



「・・・人の事を脅してくる背の高い先輩です」



「っ・・・それなら、俺でもいいじゃないか!そんなことしてくる奴なんかより、俺の方が君のこと大事にできる!!」



「えっ・・・急になんですか?」



私の言葉を聞くなり、さっきまでの諦めムードが打って代わり、俺が幸せにするモードに入ってるように見える。



その変わりように驚いてしまう。



「最初は君が幸せならそれでいいと思った。だけど、そんなことしてくる奴が相手なら、俺が幸せにする!!」



「っ・・・あ、あの・・・腕、痛いので離してください」



意気込んで私にそう伝えた先輩は、私の掴んでいた手に力を込める。



掴まれた手首にギリギリと相手の指がくい込んでくる痛みに少し顔をしかめた。



「離さないよ。君が俺と付き合うまで」



「あの・・・困ります」



私を一直線に見つめて手にさらに力を込める先輩。



振り払おうとしても私の力では振り払えなかった。