黒瀬さんが会計を済ませてラッピングを済ませた靴を手にしながら、私の元へと戻ってくる。
「じゃあ帰ろっか、プレゼントも買えたし」
「え、でも黒瀬さんの用事は?」
黒瀬さんに会ったのは黒瀬さんが用事があって出掛けてたからで、私と会ってから買い物に付き合ってもらってたから用事を済ませてないんじゃ・・・。
そう思った私は、黒瀬さんに問いかけた。
「俺は伊吹ちゃんに会う前に済ませたから大丈夫。ほら、帰ろ」
「えっ・・・?あの・・・」
プレゼントを手にしながら空いた方の手を差し出してくる黒瀬さん。
意図がわからずに黒瀬さんを見つめると、優しく微笑みながらこう告げた。
「手、繋ご。折角のいぶきちゃんの誕生日なんだもん、伊吹ちゃんのこと独り占めさせて?」
「っ・・・」
首を傾げながらずいっと手を突き出してくる黒瀬さん。
甘えるようなその言い方に、私は息を飲んだ。
そんな甘えた声で言われたら、拒否出来ないよ・・・!!
「・・・きっ、今日だけ・・・ですからね」
そう、今日だけ・・・今日だけはいいだろう。
そんな風に自分に言い聞かせながら、おずおずと黒瀬さん側の手に持っていた荷物を逆の手に持ち直して差し出した。
「ありがと」
差し出した手を優しく包み込むように手を繋ぎ、満足そうな笑みを浮かべる黒瀬さん。
それを見て思わず目を逸らしてしまう。
なんか・・・すごく緊張するんだけど。
「あ〜・・・小日向に感謝しなきゃ・・・」
「え?」
「んー、小日向に感謝しなきゃって思ってね。本来休みだったのに、好きな子の誕生日に好きな子と一緒にいられるんだもん。こんなに幸せなことはないよ」
ボソッと呟く黒瀬さんの言葉が車の通る音にかき消されて聞こえなくて聞き返す。
すると、さっきより大きな声でさっきの言葉を反復する黒瀬さん。
好きな子、を強調して。
「そ、そうですか・・・」
「そうなんですー。俺幸せなんですー」
繋いだ手を揺らしながら今にもスキップしだしそうなほどルンルン気分で歩いている黒瀬さん。
ただ手を繋いで帰ってるだけなのに大袈裟だな、と思いながらもテンションが高めの黒瀬さんの姿にときめいている自分がいた。
こんなことで喜ぶなんて・・・私が告白の返事をしたらどうなるんだろう。
そんなことを考えているうちに家に着いてしまう。
あぁ・・・もう着いちゃった・・・。
もう少し・・・こうしていたかったな・・・。
残念に思う気持ちが湧いてきて、不思議に思う。
どうして・・・そんなこと思ったんだろう・・・。
「着いちゃったね。名残惜しいけど・・・これプレゼント」
「あ、ありがとうございます」
黒瀬さんがゆっくりと繋いでいた手を離し、持っていたラッピングした靴を手渡してくる。
繋いでいた時の手の温もりが無くなって名残惜しく思いながらも、黒瀬さんからのプレゼントを受け取った。
「それじゃ、またね」
「はい、また」
手を振って2軒先のアパートへと向かって歩き出す黒瀬さん。
そんな彼に手を振り返しながらその背中を見送った。



