桜記念日

一瞬、暖かい風が吹いた気がした。

ふと、緑が綺麗なガーデンに視線が向いた。

ガーデンの桜の花が一斉に散って、桜吹雪となった。

なぁんだ。

お父さんもお母さんも、ちゃんと見てくれてたんだね。

来るの、ちょっと遅いよ。

「良かったな、理名。
きっと、ご両親も喜んでるよ」

そう言ってくれた拓実の頬に軽く口づけた。

「この式終わったら、ここによろしくね、理名」

自らの唇を軽く叩いた拓実。

「はいはい、後でならいいよ。
眠くなるまでしてあげるから、それまで待てるよね?」

椎菜も、妊娠中の過ごし方が参考になるかは分からないが教えると言ってくれた。

こういう経験談はいくつあっても困らない。

深月なんて、大学のレポート顔負けのものを送ってきそうだが。

こんなふうに、大切な親友たちにも支えてもらえる私は幸せ者だ。

また近いうちに墓前にお酒でも供えよう、と心に決めた。
きっとそのお酒で祝杯でもあげるんだろうから。

心配しなくても、3人で上手くやっていくからね。

……昔から苦手だった桜の季節。

これからは、桜の季節が来るたびに今日のこの日を思い出すことになるんだろう。

桜の季節が『大嫌い』から『好き』に変わった、大切な記念日となった。