桜記念日

最後のリハーサルも終えて、いよいよ本番だ。

「幸せになりなさいね、理名ちゃん。
拓実くんと2人で。

いいえ、もう3人で、かしらね?

まだ拓実くんには内緒にしてるんだったわね。

鞠子さんが貴女を身籠ったときに嬉しそうに報告してくれた顔に、そっくりだったんだもの。

血は争えないわね、やっぱり。

貴女はやっぱり、鞠子さんの血を引く子供だわ。
何度目かの不妊治療で授かったのまで同じで驚いたわ」

ヴァージンロードを歩く前のこと。

チャペルの扉が開く前に、鞠子さんがそんなことを言うものだから、目から雫が溢れた。

まだ泣く予定じゃなかったのに。

涙は、両親への手紙までとっておきたかった。

その手紙の中に、さり気なく家族が増える旨を書いている。

拓実のキョトン顔が目に浮かぶ。

口が堅い私の親友を信じて、拓実以外には妊娠を伝えてある。

椎菜と深月は、とても喜んでくれた。

それと同時に、先に人の親となった身としていろいろアドバイスをくれると言ってくれた。

「ほらほら。

泣くと綺麗なドレスとメイクが台無しよ?」

鞠子さんがメイクさんを呼んで、軽く直してくれた。

バッチリ、とばかりに親指を立てるのは、華恋(かれん)だ。

私の親友兼、ウェディングプランナーだ。

私の親友の挙式には携わってくれているため、場数が違う。

頼もしい限りだ。

先に入場し、ヴァージンロードの先にいる拓実の元に、鞠子さんと共に一歩、また一歩と近づく。

二言三言、拓実になにか告げた凛さん。

何を言われたのかは、後で聞いてみることにしよう。