「……はい」
「だったらお付き合いしたらいいじゃないですか。そりゃあ今はいろいろ圧倒されてるのかもしれませんけど、そんな人に選んでもらえたなんて、光栄なことですよ」
美里が励ますように言い、私を見てにっこりする。
「私は堤さんの行動力とか、頑張り屋さんのとことか好きですよ。山崎さんも同じ気持ちなんじゃないですか?」
私は顔を上げ、先ほどの哲朗との会話を繰り返す。
「他人のことなのに真剣になってくれて、とは言われましたけど」
「ほら。自信持ちましょうよ。山崎さんって物腰は柔らかいけど芯の強い方ですし、軽い気持ちで告白なんてしませんって」
軽い気持ちで――。
今思えば健司に交際を申し込まれたときは、真剣味なんて感じなかった。あの時は照れて茶化しているのだと思ったけれど、遊び半分だったのだろう。
健司は初めてのデートで自ら御曹司だと打ち明け、レストランの店員にも横柄な態度だった。自分は特別な存在だとアピールし、私のことも服従させようとしたのだ。
規模は違えど、健司と哲朗には御曹司だという共通点があったから、私は不必要に恐れてしまっていたのかもしれない。ふたりは全然違うし、比べることがそもそも間違っているのに。
『ファシール』の御曹司だなんだと騒ぐ前に、私がすべきは愛する人と向き合うこと。不安があるなら正直に打ち明ければいいし、何よりもまず哲朗を信じるべきだ。
「ありがとうございます。もう一度良く、話し合ってみます」
「その意気ですよ。応援してますから」
美里に優しく手を握られ、私もその手をギュッと握り返したのだった。
「だったらお付き合いしたらいいじゃないですか。そりゃあ今はいろいろ圧倒されてるのかもしれませんけど、そんな人に選んでもらえたなんて、光栄なことですよ」
美里が励ますように言い、私を見てにっこりする。
「私は堤さんの行動力とか、頑張り屋さんのとことか好きですよ。山崎さんも同じ気持ちなんじゃないですか?」
私は顔を上げ、先ほどの哲朗との会話を繰り返す。
「他人のことなのに真剣になってくれて、とは言われましたけど」
「ほら。自信持ちましょうよ。山崎さんって物腰は柔らかいけど芯の強い方ですし、軽い気持ちで告白なんてしませんって」
軽い気持ちで――。
今思えば健司に交際を申し込まれたときは、真剣味なんて感じなかった。あの時は照れて茶化しているのだと思ったけれど、遊び半分だったのだろう。
健司は初めてのデートで自ら御曹司だと打ち明け、レストランの店員にも横柄な態度だった。自分は特別な存在だとアピールし、私のことも服従させようとしたのだ。
規模は違えど、健司と哲朗には御曹司だという共通点があったから、私は不必要に恐れてしまっていたのかもしれない。ふたりは全然違うし、比べることがそもそも間違っているのに。
『ファシール』の御曹司だなんだと騒ぐ前に、私がすべきは愛する人と向き合うこと。不安があるなら正直に打ち明ければいいし、何よりもまず哲朗を信じるべきだ。
「ありがとうございます。もう一度良く、話し合ってみます」
「その意気ですよ。応援してますから」
美里に優しく手を握られ、私もその手をギュッと握り返したのだった。
