越後上布が紡いだ恋~祖母の着物を譲り受けたら、御曹司の溺愛がはじまりました~

 呆気にとられた美里は沈黙してしまい、私もそれ以上何も言えないでいた。
 普通はこういう反応になる。本来なら住む世界の違う人なのだ。同じステージで会話ができることが、そもそも奇跡みたいな話だった。

「それは、本当なら、大変ですね」
「本当だと思います。そんな嘘つくような人じゃないですし」
「ですよね」

 祝福モードだった美里が声のトーンを落とす。さっきの私と同じような感じになり、誰しも思うことは同じなのだと感じた。

「やっぱり、お断りした方が良いでしょうか?」
「え、なんでですか?」

 美里はビックリして目を見開くが、私は気落ちしたまま言った。

「だって美里さんだって思うでしょう? 私と山崎さんじゃ、不似合いだって」
「そんなことないですよ」
「でも、さっき大変ですねって」
「それはいろいろと乗り越えなきゃいけないことが多そうだと思っただけで。まだ何も始まってないうちから、断る必要ないと思いますけど」
「いずれ『ファシール』を継ぐ方でも、ですか?」
「この際、そこは問題じゃないですよ。山崎さんのこと、好きなんですよね?」

 言いにくい質問を直球でできるのは、美里の良いところだと思う。私は本心を語るべきか迷いながらも、コクンとうなずく。