哲朗はそんな会社の御曹司だというのか。そんな人を相手に、あんなわかったような、偉そうなことを息巻いて。
青くなってしまった私には気づいていないのか、哲朗はまだ熱く語り続ける。
「今はモノが売れない時代ですからね。うちも事業の多角化を模索していたんですよ。着物販売だけなら将来性はないかもしれませんが、レンタルや写真撮影、着付け・着方教室なんかも手がけていけば、活路はあるはずなんです」
「つまりこれから『ファシール』に戻られるんですか?」
やっとのことで、それだけ質問すると、哲朗は大きくうなずく。
「そうなりますね。和カフェのほうは、引き継ぎたいという方がいらっしゃって。営業利益も出てますから、それなりの価格で売却できると思います」
予想だにしない展開に、私はただただ当惑していた。てっきりこれから和カフェの店長である哲朗と、ゆっくり愛を育んでいくものだと思っていたのだ。
先ほどの言葉を疑う気持ちはないが、本気にして良いのか不安になる。哲朗は健司とは違うし、御曹司であることをひけらかしてもいなかった。
でも私が社長夫人に相応しくないのは事実だ。健司だってそう思っていたから、遊び相手として扱ったのだろう。
ましてや哲朗は誰もが振り返る美男子だ。とても私とは釣り合わないし、彼の両親から反対されるのが目に見えている。
さっきまでの幸せな気持ちが、急速にしぼんでいくのを感じ、私は一枚板の立派な座卓をぼんやりと見つめていた。
青くなってしまった私には気づいていないのか、哲朗はまだ熱く語り続ける。
「今はモノが売れない時代ですからね。うちも事業の多角化を模索していたんですよ。着物販売だけなら将来性はないかもしれませんが、レンタルや写真撮影、着付け・着方教室なんかも手がけていけば、活路はあるはずなんです」
「つまりこれから『ファシール』に戻られるんですか?」
やっとのことで、それだけ質問すると、哲朗は大きくうなずく。
「そうなりますね。和カフェのほうは、引き継ぎたいという方がいらっしゃって。営業利益も出てますから、それなりの価格で売却できると思います」
予想だにしない展開に、私はただただ当惑していた。てっきりこれから和カフェの店長である哲朗と、ゆっくり愛を育んでいくものだと思っていたのだ。
先ほどの言葉を疑う気持ちはないが、本気にして良いのか不安になる。哲朗は健司とは違うし、御曹司であることをひけらかしてもいなかった。
でも私が社長夫人に相応しくないのは事実だ。健司だってそう思っていたから、遊び相手として扱ったのだろう。
ましてや哲朗は誰もが振り返る美男子だ。とても私とは釣り合わないし、彼の両親から反対されるのが目に見えている。
さっきまでの幸せな気持ちが、急速にしぼんでいくのを感じ、私は一枚板の立派な座卓をぼんやりと見つめていた。
