全然普通になんて話せていないし、なんだったら、「何者だ」と言わんばりに警戒心を含んだ鋭い視線で見つめられ、今すぐに彼の見える範囲から逃げ出したいけど、まるで縫い止められたように足も動かないし……!

「ああ。君は、見るからに……デビューしたての、夜会に慣れていない貴族令嬢だな。今夜は初めての夜会か? 見ての通り、俺はここで護衛任務中だ……もしかして、何かあって帰りたいのか? 不審者でも居たとか?」

 響きの良い低い声で流れるように問いかけられて、私は軽く混乱した。

 え? 今、何個か疑問が入ってたよね? 何から、答えたら良いの?!