初めて翔と身体を重ねた翌朝。
とても気持ちの良い陽ざしの明るさで、栗花落は目を醒ました。

昨夜はぐっすりと眠れたから、もう眠気はない。
すぐ横に目を向けると、綺麗な顔で寝息を立てる翔がいて、彼と朝まで一緒に過ごしたのだと、改めて実感する。

「おはよう」

栗花落が朝の支度をしている最中に、眼を擦りながら翔がベッドから起き上がる。
翔は低血圧なのか、朝がとても弱そうだ。
何度もゴシゴシと目を擦って、スマホで時間を確認している。

「そろそろ起きましょう? 今日も会社ですから」
「……ああ。そうだな」

家に帰る時間はないから、昨日と同じ服装になってしまうが、こればかりは仕方ない。

(でも、彩絵ちゃんはそういうの、鋭いからな……。何かあったって気づいちゃうかも……)

だが、彩絵とはこれから、徹底的に戦うつもりだ。
これ以上、彼女に自分の幸せを奪われることも、穢されることも許さない。

「会社、行きたくないな」
「えっ? 急にどうしたんです?」

栗花落が問いかけると、翔は裸のまま、ベッドの上で栗花落を正面から強く、優しく抱きしめた。

「栗花落の側にずっと居たいのに、会社ではあまり話しかける機会もないから」
「……そんな」

「栗花落。おはよう。愛してる」

そう口にして、翔は栗花落の顎を右手で持ち上げて、唇を重ねる。
彼の柔らかく湿った唇が、栗花落を欲するように動いた。

名残惜しそうに離れる唇を見つめて、栗花落はゴクンと唾を飲む。

翔は目を細めて栗花落を眺めると、そっと口角を持ち上げた。


「これが最初の朝だ。これからは何度も、栗花落と同じ朝を迎える」


翔はそう言葉にして、栗花落を上目遣いに見つめた。

「――――そう、思っていいか?」

これから幾度となく翔と身体を重ね、その愛を昇華する。
そうおねだりされることが、今はひたすらに、気持ちが良い。

「いいですよ。また、同じ朝を迎えましょう?」

栗花落がそれを肯定すると、翔は安堵したように笑ってみせた。

「良かった。その言葉が聞けただけで、今は満足だ」

翔は栗花落の頭にポンと手を置いて、小さく笑う。
そしてスーツを着用すると、ワックスで髪を整えて、彼は準備万端で声を掛けた。

「行こうか。栗花落」

栗花落もまた、支度を終えて答える。

「はいっ!」