16時、午後一から途切れずに続いていた商品企画会議が終わり、耀は執務室に戻ってきた。
 個室には無駄なものはおかれておらず、調度品も実用性を重視したシンプルなものでそろえられている。

 次の会議まで1時間ほどあるから少しだけ休憩し、その後メールを確認しようと考えた耀はスーツのジャケットを脱ぎ無造作に応接セットの椅子に掛けると、部屋の隅に設置してあるコーヒーメーカーを自ら操作した。
 
 耀は周りの人間に飲み物を準備させない。
 上司にコーヒーを入れる暇があったら仕事をして欲しいからだ。
 効率を重視し無駄な感情を挟まない。こういうところも社内で『冷徹』などと言われる要因なのかもしれない。
 どう言われようと自分は構わないが。

 執務椅子に腰かけコーヒーを口にして息をつく。
 ネクタイを緩めようと首元に手をやったところでつい動きが止まった。

 先週ふたりで動物園に出かけた時、帰りがけに寄った園内のショップ。縫いぐるみから文具やタオル、アパレル商品までバラエティに富んだ品ぞろえだった。耀はここでハシビロコウの小さい縫いぐるみを買って結乃に渡した。