げ。琴葉が言った通り、彼の周りには既に大量の女子の群れがくっついていた。

「ひとりなら、私たちとまわろうよ!あ、てかインスタ教えてくれない?」

その中心で首をかいている瀬賀那津は愛想笑いを浮かべて
「ちょっと待ってる人がいてねー」
と曖昧に濁している。

はあ、めんどくさい。このまま帰ってしまおうか。この場で声をかければあの女子たちに睨まれることは決定している。

遠巻きにどうしようかなと頭をフル回転させると、背の高い瀬賀那津がこちらを見つけたのがわかった。

「あ、陽菜!」

大きく手を振りながらこちらに駆け寄ってきて、周りの女子たちの視線が一斉にこちらに向くのを感じ、私は耐えかねて逃げ出した。

瀬賀に追いつかれるのは早かった。あっという間に距離を詰められて、腕をつかまれ、立ち止まるしかなくなる。

久しぶりにこんなに走ったな。しかも動きづらい服装で。ていうかこの服汚したらやばいよね。もう遅いか、と思いつつ、フリルの裾や袖をチェックする。幸いにも擦り切れたり汚れたりはしていなさそうだった。

「なんで逃げるの」

服が汚れていないかに夢中になっていて忘れていたが、目の前にはじとーっと私を見つめる瀬賀那津がいて、私はギクリと体を硬直させた。

背の高い彼はこう一対一で向き合うと結構圧があるなと気付かされる。

「ご、めん」

体力のない私の息はまだ切れていた。