結果は、東の圧勝に終わった。

真斗は決して何も出来なかった訳では無い。
彼は、チームに大きく貢献したし、実際得点の8割がたは真斗の活躍と言ってもいい。

それでも、責任感の強い彼は自分を責めるのだろう。

私は知っている。

誰にも言わずに真斗が1人で苦しんできたこと。
何度も見てきた。

チーム内で技術の差が大きすぎて、真斗は以前、チームメイトと大きく衝突したことがあった。

「お前はいいよな上手くて」

そう言われたと、彼は笑っていた。

でもそれは気丈に振舞っていただけで、本当はものすごく傷ついてその場で泣いてしまいそうなくらいだったと、私は気づいていた。

それでも私は器用な彼なら今度も器用に解決できるだろうと放っておいた。

それがだめだった。真斗は一時期大きく体調を崩した。

もちろん原因はチーム内のトラブルから来るストレスだった。


その事件以来、私の中で絶対的に強かった真斗はどこか人間味を帯びていて、しっかりと弱さを持っている私と同じ人間なのだと気付かされた。放っておけない。

「陽菜ちゃん、そろそろ帰ろっか。真斗片付けとかで遅くなるみたいよ?」

おばさんが隣から考え込んでいた私を心配そうに覗き込む。

「私、真斗を待ちます」

おばさんの目が目下のコートの上を滑る。

「そう、ありがとね。
真斗ああみえて結構ショック受けてると思うから、陽菜ちゃんパワーで励ましてあげて!」

私はパワフルで優しいおばさんのことが大好きだ。
思わず、目を細める。

「任せてください!」

「あ、それと、陽菜ちゃんのお母さん、今日夜勤もって言ってなかった?晩御飯うちで食べたら?ご飯作って待っとくね」

やはりおばさんは優しい。

「ありがとうございます!」