大きな音を立てて、扉が閉ざされる。

 ふわりと舞う髪。
 零れ落ちそうなほど見開かれた瞳。
 伸ばした手は虚空を掻き、何も掴めずに空振った。

「アリス」

 あわや奈落へ投げ出されそうになった彼女の体は、すんでのところでしなやかな腕に掬われ、ぐいと首根っこを後ろへ引っ張られる。
 直後、眼前に聳え立っていた両開きの扉が急速に遠ざかり、色の乏しい蔦の群れによって視界そのものが閉ざされた。

 ──ああ、そんな、あと少しだったのに。

 頭を占めたのは暗い絶望。
 そしてそれを掻き消すほどの頭痛と目眩によって、彼女は呆気なく意識を失った。