ガチャという音を立てて、ドアを開けた。

「行ってきまーす」

靴を履いて外に出た。

「おはよ」

声をかけてきたのは玄関前で待つ秀一だった。

「おはよう、早いのね」

「芹那を待たせるの嫌だからな」

私だから?なんで。

「ふーん、そう。じゃあ今日こそは学校行くよ」

「あぁ」

二人で登校する時間は、不思議と嫌じゃなかった。

懐かしいような、落ち着く感じがした。

別に言葉がなくて静かでも、平気だった。

「秀一の好きな食べ物は」

「なに急に」

「私の好きな食べ物知ってるんでしょ、ずるいから」

私にも教えて、あなたのこと。

「なんで食べ物?」

「いいでしょ別に」

「卵焼き」

「卵焼きがすきなの?」

私の得意料理じゃん。

「ん」

「なんでそんな素っ気ないの、昨日は沢山喋ってくれたじゃない」

「じゃあ今度作ってきてくれよ、明日土曜日だろ。作ってきて、どっか行こうぜ2人で」

「……なんで2人なの」

「じゃあ、姉貴も連れてこようか?」

「また知らない人増えるだけだからいい」

「じゃあ、2人で決まりだ。卵焼き入りのお弁当作ってこいよ」

「わかったわよ。いいわ、作ってきてあげる。どこに行くか知らないけど」

「昨日行った場所な、人来なくて独占できるんだよ」

「え、昨日の公園いくつもり?」

「……思い出の場所なんだよ、いいだろ」

「まぁ、いいわ」