凡人の私は最強異能力者の貴方に恋をする。

「さて、そろそろ行くか」
「い、行くって…まさか…」
　ようやく、ナハトの腕から解放されたカナは放心状態で尋ねる。
「歓迎会に決まっているだろ…」
「いや…、さ、さすがにそれは…」　
　ナハトの言葉に、カナは青ざめる。
「何だ、何か問題でもあるのか？」
　分かりやすく顔色を変えるカナに、ナハトは優しく微笑む。
「だって…、ドレスもないし」
「問題ない、俺が魔法をかけてやる」
「魔法って…」
　少し呆れた様子のカナに、ナハトは再びよくわからない呪文を唱え始める。すると、驚いた事にカナの洋服がみるみる美しいドレスへと変貌していく。
「これで少しはめでたくなったな」
　懐かしいセリフに、カナは頬染める。こんなの好きになるなという方が無理な話である。
「さあ、本番だ。今度は目を逸らすなよ」
　ナハトはそう言ってカナの手の甲に一つキスを落とすと、二人は魔法のように姿を消した。

END