ここは、東京都心の食品メーカーである。

 2024年4月になって、もう葉桜になっている。

 40代後半になっている会社員のタケルは、顔は男前だが、独り身である。

 そして、ビルの屋上で、スマホのゲーム『ぷよぷよクエスト』をしているが、何だか、退屈をしていた。

 昼ご飯のお寿司を食べて、それで、ぼんやりしていた。

 その時、スマホから目を話して、屋上でぼっとしていたら、一人の30代の女性社員が、来た。

 ナツキが、いた。

 ナツキは、女優の西野七瀬に似ていて、背丈が高い。

 以前、ナツキに「今度、一緒にご飯を食べに行きませんか?」と言って振られた。それきりだった。

 そして、ナツキは、カバンから何かを取り出している。

 見たら、編み物をしている。

 もう、4月で、葉桜だが、マフラーを編んでいる。

 この時、タケルは、少し思った。

 元々、恋愛下手である。そして、口下手でもある。ただ、今の会社が、タケルを、置いているのは、たまさか、俳優の田中圭に顔が似ていて、営業に回る時、愛想が良かったから、と思う。

 その時、タケルは、魔が指した。

「そうだ、これから、編み物をしたら、ナツキさんと話ができるのではないか」と考えた。

 だが、どう編み物を始めたら良いのか、分からない。

 そして、タケルは、お金が少しあったら、「そうだ、編み物教室へ行こう」と考えた。

 タケルは、JR品川駅から、横須賀線総武線快速で、市川駅まで帰った。タケルは、千葉県市川市に、一人で暮らしている。

 そして、タケルは、会社の仕事が休みの日に、JR総武線市川駅の地元市川市角川町のビルへ向かった。

 そのまま、編み物教室の授業「初めての方のやさしい編み物」を選択した。

 その時だった。

 タケルは、部屋には、中高年の女性が多いと気が付いた。

 ただ、おじいさんもたまにいる。

 周りの中高年の女性は、そのおじいさんを可愛がっていた。

「あ、先生が、来た」

 と、生徒のみんなは、言った。

 タケルは、どんな人が来るのかと思った。

 その時だった。

 何と、ナツキだった。

 同じ会社のナツキだった。

 西野七瀬に似ているナツキだった。

「ナツキさんは、ダブルワークをしているのか」と思った。

 勿論、ナツキだって、じっとタケルを観ていた。

 その日は、授業が、終わって、タケルとナツキは、食事へ行ったらしい。そして、その後、タケルとナツキは、ずっとマフラーを二人で編んでいたようだ。しばらくして、ナツキは、そこの講師をやめて、タケルと付き合ったらしい。<完>