「もういい。わかった。認める。認めればいいんだろう? ──めちゃくちゃうれしいよ!」


 心の中の尻尾がブンブンしてしまうのであった。
 と、ここで、脱線しまくった状況を修正する救世主が現れる。
 王家ともフォルコ家とも付き合いが長く、この茶番に慣れっこな侍女頭だ。

「イヴさん、よろしいのですか? 冷めてしまいますよ?」
「──あっ、そうでした。失礼しました」

 ウサギ族の先祖返りである侍女頭は長い耳をピンと立て、イヴの丸い耳に囁く。
 これにはっとしたイヴは、ロメリアを張り付かせたまま、ようやくここを訪ねた本題に入った。

「会議でお疲れのところ、申し訳ありません。実は、舌の肥えた皆様に、新しいコーヒー豆の試飲をお願いしたくて参りました」
「新しいコーヒー豆、ということは……イヴ、もしかして?」

 真っ先に事情を察したウィリアムの問いに、イヴはにっこりと微笑んで答えた。


「はい、ウィリアム様──つい先ほど、兄が戻って参りました」