「俺がヴェロニカに伝言を頼んでいることを、君がリサにばらしたんだろう!」
「いいえ。そもそもリサさんとは面識がありませんでしたし、あなたの浮気をばらしたところで、私になんの得があると言うんですか?」

 カウンター越しに凄むダミアンに、イヴは毅然と言い返す。
 この頃には、雲行きが怪しいことに周囲も気づき始めていた。
 リサとヴェロニカの騒動の時と同様に、多くの人々が何事かと足を止めているが、すっかり頭に血が上ったダミアンには見えていないらしい。

「済ました顔をして……俺をばかにしているのかっ!」

 そう叫んでいきなりイヴの胸ぐらを掴んだ彼に、人々はぎょっとした。
 もちろん、掴まれたイヴ本人も然りである。

「悪評をばら撒いて、ここで商売できないようにしてやってもいいんだぞっ! こんなちっぽけな店、簡単に潰して──」

 さらに続いた怒鳴り声に、さすがに止めようとした者達が駆け寄ってくる気配があったが──



「貴様──その手、よほどいらんと見える」