「じーちゃん! もううっ! 目を離すとすーぐにいなくなるんだからっ!」
「徘徊じじいみたいに言わんでくれよぉ。まあったく……ウィリアムといい、孫といい、最近の若いもんは情緒というものが足りんにゃあ」
「年寄りは、すぐそうやって上から目線で語りたがる。世の人間全てが自分に合わせるべきだと思い込んでいるのは老害というものだ」
とかなんとか、カウンターの前で男三人が言い合う。
ここは、人通りの多い場所にあるコーヒー専門店『カフェ・フォルコ』。
フォルコはイヴの家名で、彼女はここの店長代理を務めていた。
カウンターの奥には、こぢんまりとしたかまどと流し台がある。
店の横幅は大人が二人並ぶのがやっとくらいだが、奥行きは十分のようだ。
ずっと向こうまで続く壁には一面に棚が作り付けられており、コーヒー豆が詰まったビンが整然と並ぶ。
「じーちゃん、もう帰るよ! 遅くなるとみんな心配するだろっ!」
「やだやだー! まだ帰りたくないんだもんっ!」
「もん、てなんだ。じじいがかわいこぶるんじゃない」
男達のやりとりを、イヴは微笑みを浮かべて眺めていた。
しかし、ふいに自分の手元に残っていたカフェオレのカップに視線を落とすと、あの、と口を挟む。
「徘徊じじいみたいに言わんでくれよぉ。まあったく……ウィリアムといい、孫といい、最近の若いもんは情緒というものが足りんにゃあ」
「年寄りは、すぐそうやって上から目線で語りたがる。世の人間全てが自分に合わせるべきだと思い込んでいるのは老害というものだ」
とかなんとか、カウンターの前で男三人が言い合う。
ここは、人通りの多い場所にあるコーヒー専門店『カフェ・フォルコ』。
フォルコはイヴの家名で、彼女はここの店長代理を務めていた。
カウンターの奥には、こぢんまりとしたかまどと流し台がある。
店の横幅は大人が二人並ぶのがやっとくらいだが、奥行きは十分のようだ。
ずっと向こうまで続く壁には一面に棚が作り付けられており、コーヒー豆が詰まったビンが整然と並ぶ。
「じーちゃん、もう帰るよ! 遅くなるとみんな心配するだろっ!」
「やだやだー! まだ帰りたくないんだもんっ!」
「もん、てなんだ。じじいがかわいこぶるんじゃない」
男達のやりとりを、イヴは微笑みを浮かべて眺めていた。
しかし、ふいに自分の手元に残っていたカフェオレのカップに視線を落とすと、あの、と口を挟む。



