代々のフォルコ家当主がコーヒー狂であること。

 イヴの記憶力が抜きん出ていること。

 それから、『カフェ・フォルコ』のコーヒーがおいしいということ。

 これらの事実が広く知れ渡っているのと同様に──


「ウィリアム様、世界一かわいい」
「……そうか」


 やがて第三十五代アンドルフ国王となるであろう第一王子ウィリアムが、『カフェ・フォルコ』の店長代理の前では〝世界一かわいい王子様〟になることを──この王宮で知らない者はいなかった。