空が赤く染まる中、イヴはようやく探していた人物を見つけた。
 相手は、王宮を警護する若い衛兵である。
 庭園の噴水の縁に腰掛けて項垂れていた衛兵は、まずは今をときめく第一王子殿下の登場に緊張の面持ちで敬礼をしたが……

「オズ・ウィンガーさん、伝言をお預かりしています」

 彼の陰からイヴが現れたとたん、目に見えて狼狽した。
 そうして、彼女が再び口を開く前にくるりと背中を向けると、硬い声で言う。

「申し訳ありませんが、勤務時間中です。私用の会話はお控えください」

 あからさまな拒絶である。
 しかし、虎の威を借る狐ではないが、頼もしい兄役が隣にいるイヴにとっては恐るるに足りない。
 彼女はぴしゃりと言い返した。