「ミケ、優勝おめでとうございます! ──おかげさまで、賭けに勝ちました!」
「賭け!? こらっ、タマ! 賭けとはなんだ! いったい、誰がそんなことを始め……」
「元締めはあの人ですよ」
「──父上か!?」

 賭けは国王様が言い出しっぺで、王妃様と侍従長と剣術大会に参加していない将官達、それからロメリアさんと私と……

「あーあ、僕はぼろ負けだよ。なにしろ、一回戦で負けると思っていた男が優勝しちゃったんだもん」
「ほう? それは期待外れで申し訳ないな」

 トラちゃんの賭け金は、面白がった国王様が出した。
 ベッと舌を出して挑発するトラちゃんに、ミケのこめかみに青筋が浮かぶ。
 私は慌ててミケの袖を引いた。

「ミケは全試合一番人気だったので、結局あまり儲けられませんでしたけど……お祝いに、何か奢って差し上げます!」
「タマは……私に賭けたのか?」
「もちろんです。全試合、ミケにしか賭けてませんよ。だって、ミケに勝ってほしかったんです」
「んん……そうかそうか」

 とたんに機嫌を直して私をよしよしするミケに、トラちゃんが面白くなさそうな顔をした。
 なお、ロメリアさんは全試合メルさんに賭けていたそうだ。
 最初からミケが勝つと確信していた様子だったのに、なぜだろう。
 首を傾げる私に、ロメリアさんはツンと澄ました顔をして言った。

「わたくしは、メルを応援しておりましたの。勝敗など、瑣末なことですわ」

 それを聞いたメルさんが、感激して涙ぐんでいたのと……

『こらぁ、珠子! 賭けをしておきながら、どこが健全なスポーツなんじゃい!』

 ネコが珍しく真っ当なツッコミをしたのが印象的だった。