恋愛ベタな二人の、とある夜



いつもは、終電までには帰るんだけど。


今日は、少し飲みすぎた自覚がある。


「今日、泊まってこうかな」

「はい?」

ソファのクッションを膝に置いたままぽろっと言ったら、返ってきたのは思いのほか低い声だった。

「終電あと30分しかないもん」

「まだ間に合うだろ」

機嫌が悪そうだけど、怒んないのは知っている。

「眠たいし、走りたくないよ」

「何言ってんのお前?俺、男なんだけど一応」

「べつに、なにもないじゃん。私と律」

「そーだけど。帰れってマジで」

「えー、なんで」

「なんでじゃなくて。
そんな事してるからろくでもない男に引っかかるんだろ」

「付き合う前にそんなことしないもん。
それに律は私にそういう事しないでしょ」

「そんなの分かんねーじゃん」

「わかるよ」


今までだって、こうやって部屋に二人でいても何もなかった。


律は持っていたお酒をテーブルに置くと、勘弁してくれといった感じでワシャワシャと自分の髪をボサボサにした。

「何を分かってんの?
俺だって、ろくでもない男になるかもしんねーし」

「ならないよ。私、知ってるもん律がどういう人か」

なんて言うと、ソファに座ったまま距離を保っていた律が私を見た。

「……全て?」




そう言った律の瞳の奥は、いつもと違う色を帯びていた。