私が最低最悪な元婚約者のことを思いを巡らせ、腹立たしく思って居たら、ジョサイアは私へと何かを言っていたところだったらしい。

 とても真剣な表情をしていたので、私はここで考え事をしていたので聞いていないとは言えずに、慌てて何度か頷いた。

「え! ええ。聞いているわ。私はちゃんと、わかっているから、大丈夫よ。ジョサイア」

 元婚約者の話を出しても、契約通りに女性関係には口は出さないからねという意味で、私がにっこり微笑めば、ジョサイアはほっと安心した様子で息をついていた。

「そうですか……良かった。出来れば君の行きたい場所へ連れて行きたいんですが、何か希望はありますか?」

 優しく良く出来た夫ジョサイアは、私の希望を聞いてくれるつもりらしい。

「それなら、劇場に行くのはどうかしら? 今話題の劇をしているらしくて、以前から気になっていたの」

 桟敷席から二人で観劇をするのは、貴族のデートの定番だから、ちょうど良いと思う。

「……ああ。劇場ですか、良いですね。わかりました。席を手配しておきます」

 久しぶりに取れたジョサイアの休日の予定はとりあえず決まったと、私たち二人はその時微笑み合った。