「好きな女の子は、虐めたくなるものだろう。お前が思っている以上に、奴は精神的に幼いんだ……まあ、そのおかげで結婚出来たんだから、それ自体はもう良いだろう」

 アルベルトは机に肘を付いて、書類をひらひらと振った。

「……おいおい。これは明日の朝までには、決裁必須と書いてあるが?」

「その通りだ」

 アルベルトが聞いたので、その通りだと僕は頷いた。公式な文書なので、最終決裁権を持つ王の印璽が必要だ。

「この分量を朝までに読めと? どう考えても無理だろう……おい。手伝え。お前の責任だろ」

 ヴィアメル王であるアルベルトは、印璽を押すだけが仕事ではない。何か間違いがあっては、それが彼の意志として発令されるので、それを最終確認することも求められる。

 僕の責任あることは確かにその通りなので、黙ったままで彼の前にある椅子へと腰掛け書類の束を持った。