「ねえ……ジョサイア、私に何か言うことはないの?」と、結婚式直前に逃げたオフィーリアは、僕に何度も聞いていた。

 今思えば、レニエラを見ていた僕に勘付いて居て、近い将来に結婚することになる自分に何か言うことがないか聞きたかったのだろう。

 悪いことをしたとは思う。だが、オフィーリアのようにレニエラの手を取って僕が逃げれば良かったかと言えばそれも違うと思う。

 男女の差だけの話ではない。お互いの立場が違い過ぎる。

 ……そうだ。ここでは君と結婚したいとだけ言っておいて、お互いに夫婦として仲が深まった時に彼女にこういう事情だったと言えば良くないか?

 すべての事情を伝えれば、きっと混乱させてしまうだろう……結婚式はすぐそこだ。

 僕は決意して隣に座っているレニエラに視線を向ければ、彼女が先に口を開いた。

「あの……モーベット侯爵。私たち二人は、現在結婚せざるを得ない状況にあるようです。まず、言っておきたいのですが、私はあなたに愛されたいなどと、身の程知らずで、大それたことは望んでおりません」

「……え?」