今日は誘拐事件が起こった時に手を貸してくださったアルベルト様へ、お礼を言いに行く予定。ちなみにアルベルト陛下は多忙な日々から解放されて、例の温泉のある離宮にも休養を兼ねて行って来たらしい。

 あの温泉は、本当に素晴らしかったから、その話で今日は陛下と盛り上がるかもしれない。

「ええ。とても似合っています。ですが、アルベルトの前では、お洒落し過ぎかもしれないですね……」

 そう言って難しい顔をしたので、私は苦笑した。

「もう。愛妾のことは、陛下も冗談って言っていたでしょう……それより! ジョサイア。似合っている……だけなの? もっともっと、私に言う言葉があるのではない?」

 ヴィアメル王国の男性は、女性に対する褒め言葉が次から次へと、口からあふれ出てくるのが普通だ。その中の一員でもあるジョサイアは本当に真面目な性格だけど、新しいドレスを着てお洒落をした妻に何か言うべき言葉が、あとひとつかふたつあっても良いはずなのに。

 私が首を傾げて尋ねても、何故か顔を赤くして、ジョサイアは俯いた。