けれど、私が感じているのは、単に無の感情だった。

 好きの反対の感情は、無関心だ。私は目の前の自分勝手過ぎる男に対し、それを感じている。

 行き当たりばったりの行動が多かったのも、これでようやく理解出来た。私が結婚したという情報を知り、婚約続行していると、昨日実家へと難癖を付けに行った。

 当たり前だけど、それで私と結婚なんて出来る訳がない。教会で結婚式を挙げて、おまけに正式な書類も提出している。

 モーベット侯爵ジョサイアと私は、正式な結婚しているんだから、不法なやり方で書類上婚約者だったショーンの出る幕なんてないのだ。

 だから、彼は私を誘拐した。

 多分、何も考えていない。どこへ逃げて……どんな生活を営んでいこうなんて、ショーンには関係ないのだ。

 その時その時の感情で動き、やりたいことをするだけ。私の気持ちなんて一切考えていない。

 だとしたら、私だってショーンへの情を、切り捨てるべきなんだわ。