「つまり、ショーン・ディレイニーは一年前に大衆の面前で口頭で姉に向け、婚約破棄をしました。ですが、事務的な手続きを、故意にせずにそのままにしていたんです」

「……ディレイニー侯爵令息殿は、婚約不履行で何を望んでいるんだろうか。もし、何かの損害賠償が必要なら、僕が支払いたいと思う……それで、彼の気が済むのなら」

 十秒ほど沈黙していたジョサイアにも、ここで私たちに言いたいことが沢山あったとは思う。同じようにショーンの行いが信じられないと言い立てるとか。

 けれど彼は、冷静に淡々とこの事態を自分が解決出来る方法を提示していた。

「両親にはショーンは訴えるとだけ言っていたそうです。その時に、特に何かを要求したとは聞いていません。申し訳ありません。母があまりの衝撃に倒れてしまったため、父も彼に詳しい話を聞くことが出来なかったそうです。そして、我が家の名誉のためにお伝えしますが、父は婚約破棄を姉がされてから、先方に婚約解消の手続きを終えたかと口頭での確認もしたそうです」

 難しい顔をしたアメデオの説明にジョサイアは、何度か頷いて言った。