「これは知らせない方が良いだろうと、姉さんは知らないことなんだ。あの馬鹿は騎士団に入ってから、姉さんとの派手な婚約破棄劇についても、あれはただの痴話喧嘩の一環だったと言い張っていたらしい。それを聞いた時には、僕も呆れて……幼稚なことしかしない馬鹿男が極まって、いよいよおかしくなったのかと思っていたけど……まさか、こんなことを考えていたとは……」

 言葉を詰まらせてアメデオが絶句してしまうのも、無理はない。

 だって、婚約破棄については、通常の場合、男性にそれをされた女性側が悪いとなってしまう。

 それに、ショーンは婚約者の私には至らないところが多々あり、ただ自分と話していただけの隣に居た女性にも嫌がらせなどをしていたと、周囲に散々に言い散らしていたのだ。

 あれが痴話喧嘩の一環だと言ったからと、誰が信じてくれるというの?

「そうね。確かにショーンは、私のことを嫌っていたわ。どうして、そんなことを……」

 婚約破棄をした私のことなんて、気にすることもなく、今はご機嫌に楽しんでいると思い込んでいた。