「ねえ。それって……大丈夫な話なの? 商人が全員が全員、悪どいとは言わないけど、利にさといことには間違いないわ。貴女みたいな貴族令嬢って、騙しやすいと思われてしまいそうだけど……」

「ふふっ……大丈夫です。その時の一緒に居た私の弟は、本当に頭の良い子で頼りになるんですよ。だから、精製方法を買い取った商人に気に入られたのは、実は私ではなく弟なんです」

 実はあの時にアメデオが私が気に入った精油を見て、遠方ではなかなか買えないのならと、商人が話を持ちかけてくるように言葉巧みに誘導したのだ。

 本当に頼りになる弟で、私はいつも助けて貰っている。

「貴族令嬢なのに……家庭教師ではなくて、商品を開発して商売を始めようとするなんて、物凄く珍しいわね」

 確かにどんな理由があれど、結婚出来ず未婚のままになった貴族令嬢は、礼儀作法などを教える家庭教師になったりする。そして、仕事振りでは仕えた家の紹介で、結婚出来たりもするのだ。

 けれど、あの時の私はもう結婚する気はなかった。