「ええ。だから、私は結婚式前に逃げてやったの。あれだけ大事にされていて、その上で恥を上塗りされて……まあ、移り気な女は憎まれるけど、ジョサイアには可哀想だと同情が集まるでしょうね。私はもうすぐこの国を出て行くから、別に誰になんと言われようが、どうでも良いもの」

「あの……ごめんなさい。私はオフィーリア様を誤解していました」

 私が謝ると、彼女は肩を竦めて微笑んだ。

「ここまで来たら……ついでだから言うけど、私が結婚式直前に逃げ出したのは、あれだけ切羽詰まった状況なら、前々から好きな女性にすぐに告白をしに行くと思ったのよ……うじうじと別の女性が好きな癖に、何の行動も起こせずに悩むイラついていた男がね」

「なんだか、私、オフィーリア様のこと……大好きになりました」

 だって、こんなの……何も言わずに自分と結婚しようとしたジョサイアのために、私と結婚するように全部計画したってことでしょう?

 すごく優しいと思うの。

「あら。ありがとう。私も私のこと、大好きなの。相性も良くなくてずーっとイライラしていた元婚約者の恋路も心配する女なんて、きっと私くらいしかいないわよ」

 オフィーリア様がおどけてにっこり笑ったので、私も思わず彼女に満面の笑顔を向けた。

 夫の元婚約者の人にこんなこと思うの、おかしいかもしれないけど……頭が良くて性格もすごくさっぱりしてて、出来れば友達になりたいって。