「婚約者なのに……それは、良くないですね」

 彼女の気持ちを対面して聞くと、オフィーリア様の言うとおりだと思う。

 政略結婚の色が濃い貴族同士だから、いずれお互いに愛人を持つこともあるだろう。けれど、それはどんなに高位の貴族だとしても、跡継ぎが出来てからの話だ。

 それまでは、出来るだけお互いにわかり合う努力をしたいという彼女の意見は、もっともだった。

「理由は、明白だったわ……ジョサイアは、ずっと貴女と結婚したかったんだと思う」

「私と?」

 さっきからジョサイアが私が好きなことが前提で話が進んでいるけど、本当に信じられない。

 ……だって、もし私のことが好きなら……。

「信じられないみたいだけど、そうなの! だとすれば、自分から好きな人が出来たから婚約解消してくれと私や親に頭を下げるべきなのに、自分の結婚すら役目や仕事の一部だと思っていたんでしょうね。特に現王アルベルト陛下は若年で即位したばかり、側近の自分が、婚約解消して本当に好きな人と……なんて、そんな理由で問題を起こすのは得策ではないと思って居たのかもしれないわね」