「けど……ジョサイアと婚約されていたなら、それを履行するべきです。ましてや、結婚式直前に駆け落ちをするなんて……それでは、彼は……あまりにも」

 あまりに予想外過ぎる今の状況に混乱していた私は、それを彼女へ向け言ってしまってから、いけないと思った。

 ここに来た理由は、別にオフィーリア様を批難したかった訳でもなんでもないのに……。

「……さっき、レニエラ様はあんなに大事にしてくれたのにと言ったけど、ジョサイアは婚約中だった私のことを全肯定をしていてるように見えて、全否定をしていたのよ。だって、もし私個人を少しでも理解してくれようとしていたのなら、好き放題をしていた私をそれではいけないと否定すべきだったわ。貴女だって、話を聞いて思わなかった? ……違う?」

 私の言葉に対し、オフィーリア様は迷いなく淡々と返した。

「……それは……確かにそうです」

 こうして詳しい経緯を詳しく説明されて、私だって彼女の言うとおりだと思う。けど、どうしてもそれを、すんなりと受け入れることは難しい。

 今まで私の中にあった彼らと、現実の二人が、あまりにも違い過ぎたから。

「あの人が私に甘やかして優し過ぎるなんて、全部見せかけのまやかしよ。全然、優しくもなんともない。親同士が決めた婚約者だったから、耳障りの良い言葉を言って希望を言えば叶えていれば、余計なこと言わないでしょ。つまり、忙しい自分の邪魔にならないようにしていたのよ。好きでもない婚約者の私とは対話なんて、する気がないの。だから、私はジョサイアが嫌いなの」