ことんと眠って再び目を開けると、もう障子戸の外は薄暗く、時計は午後六時過ぎを指していた。


横になったまま、薄暗い夕闇のなかで天井の木目を見つめていたら、すいちゃん、と部屋の向こうから、呼ばれる。


勝手に戸を開けることは、しないらしい。


起きて、障子戸を半分開けると、夕食にしよう、と、芹が先ほどとは違うスーツ姿で言った。髪も綺麗にセットされている。

わたしが眠っている間にどこかに行くのか、このあとどこかへ行くつもりなのかは、知らない。



「ずっと寝てた?」

「う、ん」

「まあ、退屈だよね」

「……芹は、出かけていたの?」

「いや。夜中に少し用があるから」



部屋を出て、朝食を食べた場所に行くと、すでにフードカバーの山がふたつ用意されていた。


朝と同じように向かい合って食べ終えたあと、少しでも退屈しないように、と、暗いお屋敷の中を芹に連れられてまた歩いた。


たどり着いたのは、本棚が四面にずらりと並んでいた書斎のようなところだった。

アンティーク調の照明がついて、何冊かの本の背表紙の文字が光る。



「前のひとから譲り受けたものがほとんどだから、古い本が多いけど。退屈しのぎにはなると思うよ」

「……前のひと」

「このお屋敷自体は、親戚が建てたもので、数年前に、苑とおれにくれたんだよ」

「……なんというか……すごいね」

「別にすごくはないけど」

「本、か」

「あ、もしかして、読まない? そっか、そうだね。女はふつうあまり読まないか」

「……性別は、関係ない、かと」

「そういうもの? まあ、男もふつうあまり読まないよね。人間はあんまり読まないものか」

「芹の、知ってる人間は、そうなの?」

「どうだろ。読書中の人間よりは、血だらけの人間の方がよく知ってるかな」

「……そう」

「冗談なんだけど」