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ほとんど眠れないまま、朝を迎えた。


浅瀬で浮いているような満ち足りない眠りから、呆気なく覚めて、目を開ける。



敷布団のなかで、そっと上体を起こして、自分が案内された畳の部屋を改めて眺めてみた。


わたしに充てられた布団一式と座面の低いソファとモダンなローテーブル。

テーブルの隅にはミモザが活けられた一輪挿しの硝子の花瓶とクラシカルな洋風の置時計がひとつ。




昨夜、裏門からお屋敷に入った後、苑はどこかへ行ってしまい、芹によってすぐにお風呂に案内された。

女物の真新しい着替えとバスタオルを渡されるやいなや芹も消え、お風呂場に取り残されたわたしは、そのままお風呂に入るしかなかった。

ただそれは、ありがたいといえばありがたく、おとなしく檜風呂に身体を沈め、念入りに身体と髪を洗った。

全身が、穢れている気がしてならなかったから。



お風呂からあがり、着替えてから脱衣所を出ると、引き戸のすぐそばには知らない男が立っていた。

その男に無言で客間に案内され、ここで一晩を過ごすことになったのだった。



月の光だけが差しこむ薄暗い部屋の中で、横になって天井をじっと見つめながら、起こった出来事のひとつひとつを慎重に整理した。


いつもある温もりだけが足りなくて、眠れるはずがなかった。

わたしが眠れていないということは、兄が眠れていないということと等しく、できる限り早くここを出なければという気持ちは増す一方だった。


明け方、遠くでバタンと扉が閉まる音がして、そのときになってようやく瞼を下ろし、ほんの少しの仮眠をとることに成功した。



いま、置時計は午前七時半を指している。

頭はさえていたけれど、心許なさと憂鬱がひどい。


髪を手櫛で整えてから、のっそりと布団から這い出て、障子戸をそっと開ける。