“芳春(ほうしゅん)会” 槐(えんじゅ)家、桔梗(ききょう)家、榧(かや)家、白百合(しらゆり)家、この四家によって構成される、代々、全国を支配してきた裏社会の巨大組織。 そのうち槐家の管轄におかれたある区域では、 【鳥篭(とりかご)】 という名の集団が多くの権力を与えられ、実質的な支配をおこなっていった。 愚策か奇策か、はたまた───。 様々な立場の者が、恐れながらも囁きあう。 なにしろ、幹部の者たちは皆、齢(よわい)、二十も過ぎていないらしい。 さて、その区域にて。 とある春の夜のことだった。 鳥篭の総長───天清月臣(あますがつきおみ)の双子の妹が、何者かに攫(さら)われた。