【 愛理:side 】


───トントンッ


「なんでケータイにも出ねぇで、1人で先に帰ったんだよ!」


ドアの向こうで聞こえるのはすぐに誰だかわかる。……大好きな人の声。


今すぐドアを開けたいけど、いつもみたいにすぐに開けられない。


ドアノブを持つ手が震えてる。


───カチャッ…


「アハッ。ゴメンゴメン。あれだよ!突然、あたしの大好きな芸人さんがTVに出るのを思い出しちゃって」


どうしてあたしが謝ってるの?


謝る必要なんか…全然ないじゃない。


それに顔を上げられない。


大好きな陸の顔を今すぐ見たいのに…怖くて見えないよ。


「……愛理?」