妹が、ふわりと広がったスカートのドレスで玄関ホールに現れた。
 今日は、私と義妹の卒業の日だ。

 王立学園。
 国内の貴族の子息令嬢のほとんどが通う学園。
 伯爵令嬢である私と、同じ年の義妹も通っていた。
 いつもは白を基調とした制服で通う生徒たちは、卒業パーティーのためにドレスで出席するはずだが……。

 玄関ホールに現れたお父様が私の姿を見た。
「お前は、こんな日くらいドレスを着たらどうだ?」
 ドレスを……と、言っても……。
 クローゼットの中には着ていけるドレスは1枚もない。
 最後にドレスを仕立ててもらったのは、4年前。
 義母と義妹がこの家に来る前の年。お母様が無くなった年だ。
 あれから慎重は20センチは伸び、ウエストも胸も成長したので、とても着られなくなった。
「お義姉様ったら、卒業パーティーの日まで、図書室にこもって本でも読むつもりじゃないのかしら?お父様、お義姉様は、いつもなのよ?学園では変わり者で誰にも相手にされないんですもの……パーティーに出てもダンスにも誘われないのが嫌なのじゃなくて?無理にドレスを着させるのもかわいそうですわお義父様」
 義妹が私に同情したような言葉を口にする。
 そこに、お義母様もやってきた。
「そうですわよ、あなた。身長ばかり伸びて、女性らしさのかけらもないんですもの。どんなドレスを身に着けようと、滑稽なだけですわよ。ドレスを着て恥をかくくらいならば、いつもの制服で出席した方がこの子も幸せでしょう」
 義妹と義母は私がドレスの1枚も持っていないのは知っている。
 わざわざ、仕立て屋を呼んで自分たちのドレスを注文するときに、わざわざ私にも同席させるからだ。
 目の前で布を選びデザインを相談するところを見せるのだ。
 そして、私に与えられている予算も使い、自分たちのドレスを仕立てていく。
「あなたには必要ないわよね。平凡な目鼻立ち。どこにでもいるような地味な茶色い髪に茶色い目。せめて女性らしい体格をしていれば。せめて小柄であれば多少は殿方の目を引くこともあったのでしょうけれど……」
 確かに、私は女性にしては身長は伸びすぎだし、慎重に栄養が行ってしまったためか、肉付きはよくない。
「ねぇ、いっそ、男性用の服でも仕立ててもらいなさいよ。ドレスよりも似合うわよ。お義姉様じゃなくて、お義兄様って呼びましょうか?」