彼のお兄様はお一人で王都に残り、財務管理のお仕事を続けられる様です。


『弟の不始末を、この身を持って拭いたいのです』

 そう仰られて、上司や職場の方もお兄様を受け入れられたそうです。



 ミシェーラは遠く国外の親戚の家に預けられることになりました。
 横領の原因を作ったとは言え、それを指示、依頼したわけではなかった、と見なされました。


 過去のパターンなら、修道院へ、だったのですが。
 最近は不適格行為による貴族令嬢の安易な修道院行きが問題視されていて。
 それならばと、国外へ飛ばされたのです。


 テディや兄、ライオネルの3人は隠匿罪に問われ……
 共に1ヶ月間の謹慎、その後兄達は第3王子殿下側近としての任を解かれることは決定しています。



 あの時、エリィと『ざまぁを致しましょう!』と盛り上がった私でした。


 バカにしやがって、舐めやがって、と。
 頭に血がのぼって、公爵家の影を使って、ルーカスの罪を調べました。




 頭から離れない言葉がありました。


『お前は自分だけじゃ何も出来なくて、エリィにお膳立てして貰っただけだよな?』


 ルーカスから向けられた言葉です。



 平気な顔して言い返したけれど。
 確かに今回のざまぁは、私の力だけでは行えなかったものでした。


 私は2日前にサプライズをあげるなんて言われたことで逆上して、嫌がるテディを引っ張り出した。
 もっと皆で相談する時間があったなら、事態は少し変わっていたでしょう。


 双方の両親達に相談していたら。
 私達の婚約はルーカス有責で解消され、相応の違約金と慰謝料が支払われ。
 彼の横領した金額は侯爵家から補填されて、お父様の退職願いは陛下が静かに受理された事でしょう。


 そうなっていたとしたら。
 こんなに砂を噛むような、こんなにやりきれないような、こんなに……
 やるせない思いを抱えずに済んだのでしょうか?


 私が私だけの力で、あの場ではない何処かで、ルーミシェにざまぁ出来ていたのなら。