違うクラスのルーカスに、あたしとあの女がどれ程親しいかなんてわかる筈ないし、絶対にあの女に確認しないとわかってるし。


 プライド高めなルーカス本人が気にしてることをくすぐっただけよ?

 高身長イケメン揃いのお仲間の男達の中で、自分が頭ひとつ以上チビなのは、彼のコンプレックスだろうから。
 あのお仲間達とも引き離してやれ、って。



 面白いようにうまく行って。
 あたし達は、ルーミシェなんて呼ばれるカップルになった。
 ルーカスはあの一言で、見事にあの女を嫌うようになった。


 婚約者同伴に決まってる卒業パーティーのパートナーにも、あたしを選んだ。


 ルーカスには、この1年で目の前でいちゃついていたのに何の文句も言ってこない冷たい婚約者を、酷い目に合わせたい願望があって。

 わざと、他にはパートナーが見つからないように直前に呼び出してやったのに、あの女は文句も言わず、涙も見せず、平気そうにして。
 ますます、ルーカスはあの女を憎んだ。



 ルーカスの瞳の色のドレス。
 ルーカスの髪の色のアクセ。


『貴方の色を身に付けたい』


 選ばれたことに舞い上がっていたあたし。
 それは可愛いおねだりだ、と思っていた。
 ルーカスにお金がないなんて、想像もしていなかった。


 こまめに綺麗なブーケや美味しいお菓子もプレゼントしてくれた。
 デートの時も毎回、ルーカスは支払いをスマートにしていたし。
 男に支払って貰っていたことが犯罪だったなんて、知らないわ!



 ……今ならわかるんだ。
 ルーカスの、あの女に対する複雑な感情も。


 あたしの気持ちもね、積極的に嫌いだったのは何故か? って。
 あたしはあの女みたいになりたかったんだ。


 スッって背筋伸ばして、顔あげて、目線を真っ直ぐにして、胸を張って、大きな歩幅で歩く。



 あたしはあの女に、なりたかったんだ。
 だから、婚約者を奪った。



 でも……結局あたしはあたしで……
 ルーカスにもたれて、腕を絡ませて、彼の身体に常に触れて。


 あの女みたいに、ひとりでは歩けなかった。