「ミシェーラ・ハロゲート、お前は知っていたのか?
 そのドレスや装飾品の費用が、王家の予算から出ていたことを」

「いいえ、いいえ、その様な!
 私は何も知らなかったのです!」

 尋ねられたミシェーラが必死にテディに訴えていました。
 彼女はもう、愛しいルーカスを見てはいません。


 ただひたすらに、その犯罪に自分は無関係だ、と。
 何も知らなかった、と。
 ただひたすらに訴えていました。




「何故、断罪にこの場を借りたのか聞いてくれ」


 テディはミシェーラにではなく、卒業生達に話し始めました。


「本日、私達は卒業して子供ではなくなった。
 小説や芝居の中にある、真実の愛など夢に見てはいけない。
 綺麗に見えても、所詮はこんなものだ。
 これからは、私達は現実の世界を生きなくてはならない。
 自分の置かれた状況が受け入れがたくても、そこで一生懸命に、己の持てる力を尽くして欲しい。
 それぞれの自分の持ち場で、幸せを掴むことが大事だ、と気付いて欲しい。
 ……これが私の、生徒会長の最後の挨拶だ」 


 ……これ、って。
 このスピーチはテディが自分で考えたの?
 私の傍らに移動してきたエリィに小声で尋ねたら。


「昨夜、色々推敲して、あれになったみたい。
 ほら、事務方には頼めなくて、自分で考えないといけなかったから」


 ……なるほど、テディが自分で。
 いつもの美麗な文言はなくて、いささか泥臭いのは、仕方ないね。

 でも、私はこちらの方が好き。