橋本家、二階廊下。
 日曜日の昼、両親は二人だけで出かけた。ここなは、留守番を頼まれた。うだるように暑い日だった。
 ここなは、ロングヘアで、部屋着姿。
 ここなは、東側の物置の引き戸を開けた。物置には、低い和ダンスが置かれたていた。ここなは、物置に入った。ここなは一番上の引き出しを開けた。そこには、ハンカチが入っていた。
 「かわいいのないかなあ」
 と、ここな。ここなは、かわいいハンカチがないか、探した。
 「ん?」
 見ると、リングがあった。それはピンク色のかわいいリングだった。
 「何これ、かわいい」
 と、いってここなは、リングをとった。ここなは、リングを見回した。
 「へえ」
 ここなは、リングを右手の人差し指にはめてみた。そうして、指にはめたリングをじっと見た。
 「かわいい」
 突然、廊下に煙が現れた。
 「え」
 そこには、銀色のショートヘア、大きい銀色の目、筋の通った鼻、シャープなフェイスライン、タキシードを着、黒いマントを羽織った細身の美少年が立っていた。
 「ええええええええええええええええ」
 と、ここな。
 「え、何、不審者あ、男の不審者あああああああああ」
 「俺様を呼び出したのは君か」
 と、美少年はいった。
 「不審者あ、不法侵入!男の不審者、不審者、警察、警察、通報おおおおおおおお」
 ここなは、わめいた。
 美少年はうろたえた。
 「あ、いや、待てよ。そうじゃなくてえ、そうじゃなくてえ、俺様は、君のしているそのリングの精霊であってえ」
 「不審者、不審者、精霊とかいってる、不審者が出てきたあ」
 ここなは、わめいている。
 「そうじゃなくて、そうじゃなくて、はあ」
 と、美少年はため息をついた。美少年は右手の指を鳴らした。すると、美少年の右手の上に鳩が現れた。
 「わあ、手品師、手品師い、手品師の不審者、不審者あ」
 と、ここな。
 「はあ」
 と、美少年はため息をついた。鳩は消えた。美少年は右手の指を鳴らした。美少年は消えた。
 「え」
 ここなは、見回した。
 「いない。さっきの不審者いない」
 すると、また美少年が現れた。
 「また不審者出てきたあ」
 と、ここな。
 「いい加減にしろ。俺は不審者じゃない」
 「え」
 「わからん?」
 と、美少年
 「え」
 「俺様は魔法使いフェレスっていうんだ」
 「えええええええええええええ。やっぱ不審者、不審者、男の不審者あ」
 「あ、いや、だからあ、俺は魔法使いなわけさ」
 「不審者、不審者あ」
 「そうじゃなくてえ」
 と、美少年は強くいった。
 「不審者、不審者あ」