美術室前。
 祥子が、懐中電灯を美術室に照らした。
 「美術室だ」
 と、祥子。
 「学校の怪談その二、美術室のベートーベンの肖像画の目が光る」
 と、木村君。
 「はーはははははは」
 と、聖也と氷河は笑った。
 「嘘だ」
 と、氷河。
 「そんなことない」
 と、ここな。
 「やっぱここにも霊気を感じる。さっきみたく付喪神じゃないかなあ」
 と、みな。
 「うーん」
 と、フェレス。
 「おそらく付喪神とは違うと思う」
 と、フェレスはつづけた。
 「とにかく入ってみよう」
 と、祥子。
 祥子は美術室のドアを開けた。がらがら。
 祥子は懐中電灯を照らしながら入っていった。木村君、聖也、氷河、ここなたち、フェレスも入って来た。
 祥子は壁にはられた肖像画を照らした。ベートーベンが照らされた。
 「あ、ベートーベンだ」
 と、木村君。
 「目は光ってないぜ」
 と、氷河。
 「うーん。あの肖像画から霊気も感じない」
 と、みな。
 「じゃあ、付喪神じゃないかあ」
 と、ここな。
 「どう思う。フェレスさん」
 と、ここな。
 「うーん」
 と、フェレスは考え込んだ。
 「やっぱペテンだ」
 と、氷河。
 「肖像画の目が光るなんてことない」
 と、氷河はつづけた。
 「えええええええええ」
 と、木村君。
 「絵師妖精の仕業かもしれん」
 と、フェレスさん。
 「絵師妖精?」
 と、ここな。
 「はーははははは」
 と、聖也と氷河が笑った。
 「付喪神の次は絵師妖精かよ」
 と、氷河。
 ここな、みな、芽亜里、ここは、千代子はむっとした。
 フェレスは咳ばらいをした。
 「絵師妖精というのは、絵にいたずらして、動かしたりするんだ」
 と、フェレス。
 「へー」
 と、ここな。
 「そんなのペテンだ」
 と、氷河。
 ここなは、むっとした。
 「論より証拠だ」
 と、フェレスはいって、指を鳴らした。ポンと、ドロップ缶のようなものが現れた。
 「妖精捕獲キャンディー」
 と、フェレス。
 「これは、妖精をおびき寄せるキャンディーなんだ」
 「へえ」
 と、ここな。フェレスはドロップ缶のようなものをここなに渡した。
 「缶からキャンディーを出すんだ」
 と、フェレス。
 「ああ、はいはい」
 と、ここなはいって、片手で缶を斜めにし、片手にキャンディーを出した。そこに現れたのは、虹色の不思議なキャンディーだった。
 「うわあ。何これえ」
 と、ここな。
 「うわあ、かっこいいなあ」
 と、木村君。
 「宙に浮かしてみろ」
 と、フェレス。
 「え」
 と、ここな。
 「いいから」
 と、フェレス。
 「うん」
 といって、ここなはキャンディーを上へやった。するとキャンディーは宙を浮いた。
 「うをー。すげえ」
 と、木村君。