音楽室前廊下。
 もう暗い。
 祥子が懐中電灯を廊下に照らしている。そのあとに木村君、その後ろに聖也と、氷河。そのうしろに、ここな、みな、芽亜里、ここは、千代子、最後にフェレス。
 祥子が音楽室のドアを照らした。
 「ここね」
 「なんも聞こえないぞ」
 と、聖也。
 「だよな」
 と、氷河。
 「でも霊気は感じるよ」
 と、みな。
 「わあ、始まったよ。女子ってそんなこというよなあ」
 と、聖也。
 「わあ、またはじまたよ。ジェンハラが」
 と、みな。
 「ほんと」
 と、ここな。
 「何」
 と、聖也。
 「ま、まあ、まあ。とりあえず、音楽室入ってみよう」
 と祥子はいって、音楽室のドアを開けた。がらがら。

 音楽室。
 暗い。
 祥子が懐中電灯を照らしている。ピアノを照らした。
 「あ、ピアノだ」
 と、木村君が祥子の前に来た。 
 聖也、氷河、ここなたちも入って来た。最後にフェレスが入って来た。
 「ピアノなってないぜ」
 と、聖也。
 「ほんと」
 と、氷河。
 「でもピアノに霊気は感じるよ」
 と、みな。
 「ほんと」
 と、ここな。
 「でもなってないもんはなってないしなあ」
 と、聖也がいった。
 「うーん」
 と、木村君。
 「やっぱ、噂は嘘か。風評被害だぜ」
 と、氷河。
 「そんなあ」
 と、木村君。
 「うーん。ピアノ、なる気配はないねえ」
 と、祥子。
 一同、ピアノを見ている。
 「フェレスさん」
 と、ここな。
 「ん」
 「なんとかならない」
 と、ここなは小さい声でいった。
 「うーん」
 フェレスはピアノを見つめた。
 「付喪神が眠っているな」
 と、フェレスはいった。
 「つ、付喪神?」
 ここな。
 一同が、フェレスを見た。
 「ああ、長い年月を経た道具に宿る精霊さ」
 と、フェレス。
 「へえ」
 「うーん。よし」
 といってフェレスは指を鳴らした。すると、フェレスの手に小さな目覚まし時計がのっていた。
 「付喪神目覚まし時計」
 と、フェレスは言った。
 「これは、ものに宿った付喪神を起こすことができる目覚まし時計なんだ」
 といって、フェレスはその目覚まし時計をここなに渡した。
 「わあ、かわいい」
 と、ここな。
 「ほんと」
 と、みな。
 「うん」
 と、芽亜里。
 ここなの友達ギャルがその目覚まし時計を見つめた。
 「さあ、ピアノの近くに行って、目覚まし時計を鳴らすんだ。スイッチは裏にある」
 と、フェレス。
 「うん」
 「橋本さん、僕も一緒に行くよ」
 と、木村君。
 「え」
 と、ここな。
 「目の前でピアノに付喪神がおきるとこ見たいんだ」
 と、木村君。
 「あ、そうだよね。いいよ」
 みなが、ここなの腕を腕でつついた。
 「じゃ、じゃあ、行こう」
 と、ここな。
 「うん」
 と、木村君。
 木村君が先にピアノに近づいた。そのあとにここなが続いた。そこを祥子が懐中電灯で照らした。
 「気を付けるんだぞ」
 と、祥子。
 木村君とここなは、ピアノの前に来た。
 (うわあ、木村君と一緒だあ)ここなはどきどきしてきた。それが恐怖からくるのか、木村君からくるのかわからなかった。
 「うわあ、どきどきするなあ」
 と、木村君。
 「え」
 と、ここな。
 「橋本さん、早く」
 と、木村君。
 「う、うん」
 ここなは、付喪神目覚まし時計のスイッチを入れた。