鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「……あのとき、横を歩きながらチラチラ俺を見上げていた女の子の印象が、汐見とどうにも被ると思っていたんだ」

 そう言って、岩瀬先輩が深いため息を吐く。

「まさか、こんなところで再会するなんてな」

「じゃあ、岩瀬先輩も、あのときのこと覚えて……っていうか、あのとき、わたしがチラチラ見てたって、気付いてたんですか⁉」


 ずっと前を見てたから、絶対に気付かれてないと思ってたのに!


「見られているのが恥ずかしくて、ずっと前を見て気付いていないフリをしていたんだよ」

 岩瀬先輩が、恥ずかしそうな、不貞腐れたような表情を浮かべている。

「あんまりジロジロ見るな。俺は、隼人ほど、見られるのに慣れていない」

「三谷先輩、さっきもたくさんの女の子に囲まれて、すっごくうれしそうでした」

 笑顔でファンサービス中(?)の三谷先輩を思い出し、ふふっと笑みがこぼれる。

「ああ。応援が多ければ多いほど燃えるらしい。これからも、時間があれば応援頼む」

「はいっ、もちろんです。わたしなんかの応援が、サッカー部のみなさんの助けになるんでしたら、これからもいっぱい応援します」

「『なんか』なんて言うな。流れが向こうに傾きかけていたとき、汐見のあの大きな声援のおかげで、がらっとグラウンド内の空気が変わったよ」

「……本当、ですか?」

「ああ」

 岩瀬先輩が、わたしに向かって大きくうなずいてくれた。